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老後資金2,000万円問題!?自分に必要な金額の計算方法と準備方法

1. 一時話題となった2,000万円問題とは?
2. 「老後2,000万円問題」の報告書が本当は伝えたかったこととは?
3. 自分の場合の老後必要資金計算方法
3.1. リタイア後に必要な資金の総額
3.2. リタイアまでに準備予定の金額
4. 老後資金の準備方法
5. 税優遇を受けられる積立投資制度「つみたてNISA」と「iDeCo」とは
6. 自助努力でできることを理解して取り組もう
ファイナンシャル・プランナー ゆりもと ひろみ
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一時話題となった2,000万円問題とは?

数年前、「2,000万円問題」が大きく取り上げられ、巷で騒がれました。事の発端は、2019年6月3日付で公表された、金融審議会の市場ワーキング・グループ報告書の記述です。平均的な日本人のリタイア 夫婦では、受給できる公的年金より支出のほうが月額約5万円上回っているため、不足する総額は20~30年分では単純計算で1,300~2,000万円になる、ということが書かれていました。そのなかの「2,000万円」という数字だけが大きく取り上げられ、老後の不安を煽るような論調が独り歩きして、大変な騒ぎになりました。記述の続きには、「この金額はあくまで平均の不足額から導きだしたものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる。」と書かれていたのですが、そこを公平に検討する論調は少なく残念でした。当時私もこの問題には関心を持ち、該当の報告書に全編目を通しました。元の資料を確認されると、冷静に老後資金問題について考えを深めることができると思います。

参考:金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理
(※話題となった記述の要約は、報告書の21ページにあります)

「2,000万円問題」の報告書が本当は伝えたかったこととは?

前述の報告書の主張を簡単にまとめると以下のようになります。

  1. 高齢社会の生活費の現状
    高齢夫婦無職世帯の平均収支は、実収入209,198円に対し実支出263,718円であり、月額約5万円不足している
  2. 現状から導かれる課題
    平均寿命は男性約 81 歳、女性約 87 歳のため、いわゆる年金生活者となる65歳以降、20~30年の人生があるため、月額約5万円不足する場合、1,300万円~2,000万円の老後資金準備が必要となる。ただし、生活費や受給年金額などで、必要資金は人によって異なる。
  3. 対策
    現役世代は、長期投資・積立投資・分散投資による資産形成を検討する。
    リタイア前後の世代は、就労計画と資産管理に取り組む重要性を認識する。
    高齢世代は、認知や判断能力の低下に対する準備をしていくべき。

いかがでしょうか?報告書では、客観的かつ公平に、日本人の老後に対する現状、課題、対策がまとめられています。ファイナンシャル・プランナーとしては、報告書のメッセージを正しく受け止め、自分の将来に備える方法を考えていくべきであると考えています。

自分の場合の老後必要資金計算方法

読者の皆様の一番の関心事は、「自分の場合、必要な老後資金はいくらになるのかしら?」ということだと思います。FP相談では、「老後までにいくらの貯蓄をすればよいですか」という質問は、ベスト3に入るくらい多いです。老後の必要資金を正確に試算するためには、ライフプランを作成するのが一番お勧めですが、今回は簡易計算の考え方をご紹介します。

計算方法は、「リタイア後に必要な資金の総額」-「リタイアまでに準備予定の金額」となります。老後30年分の資金を計算したい場合の、考え方の目安をご紹介します。

リタイア後に必要な資金の総額

老後の月々の生活費×30年分
老後の年間支出(固定資産税、旅行代、家電購入費用等)×30年分
大きな支出のために必要なお金(車購入代、リフォーム代、老人ホーム入居費等)
⇒これらの合計額が、必要資金総額となります。

リタイアまでに準備予定の金額

公的年金受給見込額×30年分
個人年金×受取年数分(10年確定年金タイプが多い)
退職金見込額
⇒これらの合計額が、準備予定の金額となります。

「リタイア後に必要な資金の総額」<「リタイアまでに準備予定の金額」
となった方は、老後の必要資金準備の目途がついているので一安心です。

「リタイア後に必要な 資金の総額」>「リタイアまでに準備予定の金額」
多くの方はこちらになります。足りない差額をリタイアまでに貯蓄や資産運用で準備していく必要があります。

老後資金の準備方法

では、老後資金をどうやって準備していくかということですが、お勧めは収入からの天引きによる貯蓄や資産運用です。天引きというのは、収入が入ってくる口座から、毎月自動的に引き落とされ、別のお金が貯まるハコへお金を移す仕組みのことです。

金融機関の定期預金や定期積金、個人年金保険等の貯蓄性保険の保険料、投資信託等の積立投資等が代表選手 です。

まずは収入から一定額を将来のために取り分けて、貯蓄が増えていく仕組みを作ります。更に低金利の昨今においては、節税になったり、運用益が見込めたりする金融商品の購入方法を理解して、活用していきたいものです。投資信託による長期積立投資を、税制優遇で支援する代表制度が、「つみたてNISA」と「iDeCo(個人型確定拠出年金)」です。

長期積立投資がなぜ注目されているのかというと、リタイアまでに20~30年以上の積立運用期間がある方の場合、運用をすることで、資産形成のスピードが上がる可能性が高いためです。30年間毎月1万円を金利ゼロで積み立てた場合は、360万円を貯めることができます。一方、平均利回りが3%の金融商品で積立運用を行った場合、計算上は30年で584万円の資産形成ができることになります。投資信託の運用益は毎年確定ではなく、価格変動のリスクが 伴うことには注意いただきたいのですが、貯蓄の一部を長期運用に回すことは効果があると考えられています。

税優遇を受けられる積立投資制度「つみたてNISA」と「iDeCo」とは

つみたてNISAは、年間 40 万円まで、所定の投資信託の積立投資においては、最長20年運用益が非課税になるという制度です。2037年までの時限措置ではありますが、約20年間という長期の資産形成に取り組める制度です。毎月約3.3万円の投資信託積立投資ができますが、月々1,000円からなど、無理のない金額で始めることも可能です。

一方iDeCo は、投資信託積立の掛金が所得控除となる制度です。給与収入や事業所得などがある方には、課税所得を減らせるというメリットを享受しながら積立運用ができます。運用期間中は非課税、年金受給時も一定の税制優遇があります。加入期間は従来20歳~60歳まででしたが、2022年の改正で、一定の条件を満たせば65歳まで加入でき、受給開始時期も75歳まで延長されます。加入期間中の中途引き出しは原則できません。

自助努力でできることを理解して取り組もう

人生100年時代に伴い、1人ひとりが自分の老後や家族の老後についてどうすべきか、きちんと向き合っていく重要性が増しています。平均寿命がこれからも延びていくのであれば、年金だけでは充分な備えにならないのは必至と心得て、自助努力でできることを調べ、資産形成に取り組んでいきましょう。いたずらに不安を膨らませるのではなく、貯蓄や資産運用の計画を考えたり、75歳くらいまでは元気に楽しく働けるキャリアプランを考えたりしていくなど、「叶えたいこと」と「自分にもできること」を組み合わせて解決を目指していただければと存じます。ファイナンシャル・プランナーは皆様の自助努力のアクションを応援しています。

※本コラムは共済・保険ガイドサイト<お金と仕事と共済>にて執筆したコラムを転載しております。

 

 

 

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