フリーランサーになる落とし穴! 意外と高い国民健康保険料計算の仕組み
人生100歳時代において一番心強いのは、自分や家族の稼ぐ力を高めていくことですので、独立は前向きなチャレンジの一つと言えます。
けれどちょっと待って!
日本では給与所得者が加入できる社会保険(厚生年金と健康保険等)はとても保障が手厚く、保険料は労使折半という仕組みのため負担が軽めです。フリーランサーになる場合にどれだけのメリットを捨てるのか、理解と覚悟をもって選択することお勧めします。
今回は、みなさんの理解が薄いと言いますか、制度がややこし過ぎてあまり理解されていない、国民健康保険料の計算の仕組みをご紹介します。
日本では「国民皆保険制度」と言われるように、すべての国民が何らかの健康保険に加入しています。大きくは、職域の健康保険「健保(けんぽ)」と、地域の国民健康保険「国保(こくほ)」があります。
(これ以外に「建設国保」等、地域の特定の職業のための健保組合もあります)
「脱サラをする」ということは、大半の方は、健康保険が「けんぽ」から「こくほ」に変わるということを意味します。では、どれくらい保険料負担が変わるのか、事例で見て見ましょう。
【健康保険料の計算例】
・家族構成
世帯主35歳、配偶者35歳(収入なし)、子ども3歳と1歳の2名
東京都大田区在住(R3年度で計算)
・収入状況
1.世帯主が給与所得者で年収360万円(月収額面30万円・賞与なし)の場合
→健康保険料年額177,120円(月々14,760円)
2.世帯主がフリーランサーで月収30万円(必要経費等を引いた所得が月15万円※1)の場合
→国民健康保険料年額338,698円(月額単価28,225円※2)
※1:必要経費に算入できるものは個別性が高いため、所得はあくまでも例です。
※2:実際の国民年金保険料の支払いは、6月~翌年3月までの10回払いになります。
なんと、前提条件が上記の場合、健保と国保保険料の年間差額は161,578円!となります。
どうしてこのような差がでるのでしょうか。国民健康保険料計算方法の注意点を、以下にまとめました。
【1】国民健康保険料は家族の人数が多いほど高くなる
国民年金保険料の計算は複雑ですが、大きく影響する要因は2つです。その2つとは、「世帯の所得」と「国保に加入する家族の人数」です。
家族の人数カウントにおいて気を付けて頂きたいのは、国民健康保険料に扶養と言う概念がないことです。世帯主が経済的に扶養している、ほとんど収入のない家族であっても、国保の加入対象者であれば1名としてカウントされ、「均等割」という保険料がかかってきます。
収入のない配偶者や子ども、高齢の親御さんなども、生計を一にしていればその分国民健康保険料は上がります。一方、サラリーマンが加入する健康保険は、子どもの人数が増えても保険料は上がりません。国民健康保険は、健康保険に比べ、子だくさんの家庭には不利な仕組みになっていると言えます。
【2】国民年金保険料の算定の所得(収入)の範囲に注意!
国民健康保険料の計算の所得には、以下の様々な所得が含まれます。しかも、国保に加入する家族全員の所得の合計で保険料が決まります。
●給与所得(事業専従者給与等を含む)
●雑所得(公的年金所得を含む)
●利子所得
●配当所得(※3)
●不動産所得
●事業所得(営業・農業等)
●総合短期譲渡所得 総合長期譲渡所得(土地・建物以外の財産を売却したときの所得)
●分離短期譲渡所得 分離長期譲渡所得(土地・建物等を売却した時の所得で、特別控除後の金額)
●株式等に係る譲渡所得(※3)
●一時所得
●山林所得
※3 確定申告をしなければ算定対象外
具体例としては、「保険の満期金が思いのほか多く、一時所得が発生した」「同居しているおじいちゃんは公的年金を受け取っていて、控除後も年金所得(雑所得)がある」「個人年金から年金をたくさん受け取っている」という場合は、国民年金保険料の算定となる所得にカウントされ、保険料が高くなることがあります。
また、気を付けないといけないのが不動産の売却益が大きい場合です。「今年、親の代から50年以上住んでいた自宅を売却し、分離長期譲渡所得が数百万円になった」と言うケースでは、翌年の国保は負荷限度額まで上がってしまう可能性があります。納税用資金以外にも、国保保険料の負担増分の資金準備も忘れないで頂きたいと思います。
【3】確定申告をする際に注意!
上場株式等の譲渡益(特定口座で源泉徴収ありを選択している場合)や上場株式等の配当は、課税済みのため申告不要とされており、所得割の算定上除外されます。
ところが、損益通算等を目的に確定申告をすると、なんと利益が総所得金額から除外されず、国保の所得割の算定に含まれてしまう、つまり税金が安くなっても国保保険料が上がってしまう、ということがあり得ます。
なお、国民健康保険料の算定は、住民税の課税所得を基本にしています。そのため上場株式等の譲渡益や配当で確定申告する場合でも、住民税の課税方式として申告不要制度を選択した場合は、国民健康保険料の算定対象に含まれません。
以上、国民健康保険料の計算方法の注意点を見てきましたが、国保には「出産手当金」と「傷病手当金」がない等、保障面でも健保と違いがあります。健康保険と国民健康保険の違いを理解した上で働き方を選び、後から「しまった!」ということは減らしたいものですね。
FPフローリストでは、経験豊富なFPが、一人ひとりに合ったライフプランをご提案しています。キャリアプランに伴う家計の変化を予測したい方や、税社保の仕組みや負担を理解した上で計画的に資産形成を実行したいと思った方は、ぜひFPフローリストのファイナンシャル・プランナーにご相談ください。
(令和3年8月13日時点の情報をもとに作成)
- 教育費や家計、資産運用などの疑問はFPに相談して解決しよう!