インフレ時代の教育費対策:学資保険だけに頼らない“賢い準備法”
◆アメリカのインフレ事情と日本の今後
先日、シカゴ在住FP の友人に色々話を聞きました。アメリカではインフレが激しくなっているそうで、例えば食品では、卵が1ダース7ドル(12個で約1,000円!)もするそうです。また、最近日本から結婚したばかりのカップルが移住してきたそうですが、家賃が約28万円かかるそうです。色々話を聞いていると、生活費は日本の3倍ぐらいなのかなという印象でした。ただ、日本とアメリカで桁が違うのが教育費と医療費です。アメリカの大学に進学すると、年間1,000万円かかるの当たり前、という状況のようです。また、ある学生さんがスキーで骨折して全治3ヶ月の治療をしたら、病院から合計で450万円の請求が来たとのことです。
日本の学費や医療費がすぐにここまで凄まじい金額になるとは考えにくいですが、日本でもインフレが本格的に始まっていますので、モノの値段や人件費は上がっていくと想定されます。10年後20年後に使う資金の準備に関しては、インフレ対策を考えてないといけない時代になりました。本日は、生まれたばかりのお子さんの教育資金をどのように準備すべきかお話いたします。教育資金以外でも、数十年後に使うお金の準備であれば同じ考え方が応用できると思います。
◆インフレが続くと将来の学費はいくらになる?
大学の授業料や教育費は年々上昇しています。特に昨今のインフレ傾向が長く続くと、20年後に大学進学を迎えるお子さまの教育費は、現在の想定額を大きく超える可能性があります。
たとえば、私立大学4年間の学費は現在で平均約400〜500万円程度といわれますが、物価が毎年3%ずつ上昇すると20年後には約1.8倍、700万〜900万円程度が必要になる計算です。これに加えて仕送りや生活費も必要となれば、親としては早めに備えておくことが欠かせません。
では、インフレに負けない教育費準備はどうすれば良いのでしょうか?
◆教育費準備の基本は「自動天引き」と「引き出しにくさ」
教育費はまとまった金額が必要になるため、月々日々の家計から少しずつコツコツ貯めていくのが王道です。しかし、先に貯金したい額を取り分けておかないと、つい使ってしまい、気づけば残っていない、という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この点で保険型の商品は教育費の準備と非常に相性が良いといえます。毎月保険料が銀行口座(又はクレジットカード)から自動的に引き落とされ、貯蓄が着実に増やせます。さらに、保険は途中で安易に引き出すことが難しいため、結果的に「計画通りに貯める」ことができます。教育費のように将来確実に必要になる資金には、強制力のある仕組みが役立ちます。
◆学資保険だけじゃない!教育資金に使える保険の活用法
「教育費=学資保険」というイメージは根強いですが、実際にはさまざまな保険を教育費準備に活用できます。例えば、終身保険に10年払いや15年払いで加入するという方法もあります。学資保険と似ていますが、払込期間終了後に解約返戻金を受け取ることで、まとまった教育資金を準備できます。さらに、親に万一のことがあっても死亡保険金が支払われるため、教育資金の確保が途切れない安心感があります。
また、運用の仕方においても多様な保険商品があります。そのなかで3つほどご紹介します。
1.円建て保険
日本円で積み立てて確実に貯められるのが強みです。予定利率は低めですが、安全性を重視したい方に向いています。
2.外貨建て保険(ドル建が中心)
為替の影響を受けますが、インフレや金利上昇に比較的強いのが特徴です。将来お子さんが留学を希望した場合、ドル建てで準備していた資金は非常に有効に使えます。
3.変額保険
株式や債券などで運用するためリスクはありますが、長期的には資産が大きく成長する可能性も。ただし、学資というのは確実に貯めていきたい性格の資金ですから、全額を変額保険にするのではなく、円建ての金融資産と組み合わせるのも現実的です。
これらを参考に、必ずしも学資保険に限定せず、教育資金の目的に応じて複数の保険や金融商品を組み合わせることが、インフレ時代の賢い準備法といえるでしょう。
◆実際にどのくらい貯めればいい?
教育費は金額が大きいため「何から始めれば良いのか分からない」という声もよく聞きます。そんなときは「毎月の積立額を決めると、18年間でどのくらい貯まるか」を見て、準備したい金額から積立額を考えてみましょう。
お子様が生まれたらすぐに毎月積立を開始する場合:
毎月 1万円 積立 → 18年間で 約200万円
毎月 1万5千円 積立 → 18年間で 約300万円
お子様が18歳になる頃までに200〜300万円を準備できると、大学入学時の入学金や初年度の学費、さらには入学準備にかかる費用(パソコンや家電の購入、引っ越し費用など)をかなりカバーできます。兄弟がいるご家庭では、一人ずつ資金準備をしておけると将来大助かりです。
◆今の環境だからこそ見直したい教育費準備
かつては長いデフレの影響で、円建ての貯蓄性保険は予定利率が低く、魅力に乏しい時期がありました。しかし最近は金利環境が変化し、円建て保険の利回りが改善してきています。これまで敬遠していた方も、改めて最近の利率を確認して検討してみる価値はあると思います。
児童手当や大学無償化といった制度も整ってきていますが、「この制度が20年後も続いているかどうか」は誰にも分かりません。また、制度が使えない進学先をお子さんが希望することもあり得ます。どんな環境になっても、お子さまに希望する教育を受けさせられるように。今から少しずつ準備を始めることで、親として希望の進路を後押しできるようにしておきたいですね。
- 教育費や家計、資産運用などの疑問はFPに相談して解決しよう!