助かるけれど、注意も必要!知っておきたい「奨学金」のお話
奨学金は、家計の資金繰りを解決する方法の一つです
奨学金や教育ローンを考える場面は、主に、教育資金の中で一番お金がかかる大学の費用に直面したときでしょう。大学の学費は、私立では特に高く、お子様が何人かいれば、学費も2倍、3倍になり、必要な時期も次々に来たり、重なったりして準備が間に合わなくなることがあります。例えば、大学に通うお子様が二人重なると、年間200万~300万円が出ていくことは一般的で、この金額を数年間出し続けられるご家庭はかなり限られます。このような家計のやり繰りが大変なとき、学費を実質、分割払いにして資金繰りを解決する代表的な手段として、奨学金や教育ローンがあるのです。
①教育ローン
教育ローンは「親が借りるお金」 団体信用生命保険の有無に注目しましょう
では、奨学金と教育ローンの違いについて見てみましょう。教育ローンは、子どもの学費を出すために親が借りる仕組みであり、返すのも親となります。
教育ローンを選ぶ際には、団体信用生命保険に注目してください。これは、ローン返済の途中で返済者が亡くなった場合、残りのローンを返さなくてよくなる保険です。ローンの金利は安ければ安い方が助かります。しかし、金利が安いかわりに団体信用生命保険がついていないローンを選んだ場合では、返済者であるお父様が万が一亡くなったときに、残されたお子様やお母様でローンを返していかなければならないということが起こります。別の生命保険に加入していて何千万円かのお金がしっかり入って来る場合は、そのお金で教育ローンの残りを支払うことも可能です。しかし、他に入ってくる保険金が無い場合、教育ローンの返済が残るため注意が必要です。
②奨学金
奨学金の魅力は「安い金利」と「卒業後の返済スタート」
奨学金は、学生本人が借りるお金であり、返還義務者はお子様になります。実は、教育ローンよりも奨学金の方ほうが圧倒的に金利は安いです。返済不要の奨学金では、授業の出席状況や優れた成績など支給対象の選定基準が大変厳しいですが、一般的な基準で受けられる奨学金でも、金利の面では教育ローンより安く借りることができます。
また、奨学金は、卒業後に返済が始まるのも有り難いところです。教育ローンには、翌月からすぐに返済が始まる場合があります。一方、奨学金は卒業後に返済がスタートするので、資金繰り的にはとても助かります。
一点、気を付けてほしいのは、奨学金は入学してから申請し、受理されるまで1、2か月かかります。入学する時期にはまだ支給が始まらないので、入学金や最初の学費、教科書代などには、奨学金は使えません。別途、事前に準備しておきましょう。
奨学金は「学生本人の借金」です
気が付かれた方もいらっしゃると思いますが、奨学金と教育ローンでは、それぞれ借りる人、つまり、返済義務の対象が違います。教育ローンは「親」、奨学金だと「学生本人」です。「金利の低い奨学金をお子様に借りてもらい、分割払いでご両親が返していく」という計画で奨学金を借りる場合でも、公的には、「お子様の借り入れ」「お子様の借金」です。万が一、ご両親が返せなくなった場合は、お子様自身が返さなければならないと理解させたうえで、手配することが大事です。
また、「ご両親が学費を出せないので、奨学金で希望の学校へ行き、お子様自身で奨学金を返さなくてはならない」というケースも増えています。その場合はより一層、「返済するのは自分自身」という意識をお子様が持てるように、話し合っておかねばなりません。
厳しい金銭事情を知ることが「学びへの原動力」になることも
最近のベストセラーにこんなエピソードがありました。
「親が金銭的にルーズで、子どもに黙って奨学金を借りた。子どもは無事大学を卒業できたが、ある日、その奨学金を親が全く返していないことが分かり、子どもは、突然数百万円のお金を返していかなければならないことに気が付いた」
これでは、せっかくの社会人生活が、金銭的にも気持ちの面でも、マイナスからのスタートになってしまいます。奨学金の返済の当てがうやむやなままに借りて、「やっぱり親が返せないから自分で何とかしてほしい」と伝えるような状況は避けるべきです。経済的に厳しい現状を伝え、お子様に一緒に考えてもらうことは、決して悪いことではありません。「自分で奨学金を返してまで、その学校に行きたいのか」を問いかける教育効果にもなります。「そこまでしても入学したい。」という意識が明確にあれば、経済的に厳しいことは「自立を目指し頑張っていくための原動力」になるでしょう。
奨学金は「最後の手段」。教育資金は、長期的視点で計画的に貯めましょう
基本的には、学費は扶養者である親がきちんと出すのが原則だと考えましょう。逆に言えば、親が学費を出せる範囲で学校を選ぶのが基本でしょう。
しかし、「5年後に入る退職金で必ず返す」など、誰がいつ返すのかを明確にしたうえで奨学金を借り、学費の一部を補填することで希望の教育が叶うのならば、それはよい乗り切り方だと思います。
教育資金は、お子様が生まれた時点で、将来必要な額と時期が決まるため、本来は計画的に準備しやすい資金です。大学に在学する数年間、毎年100万円、200万円を準備し続けるのはきつくても、18年間かけて、毎年分割で事前に貯めていけば乗り切りやすくなります。
まだ、お子様が小さい方は、奨学金を借りて乗り切ることを考えるよりも、学資用積立金や保険に入ってお金を貯めることから検討してみましょう。お子様が生まれてから毎月1万円を貯めると18歳までに200万円、1万5千円を貯めると300万円にもなります。また、お子様の児童手当を使わずに貯めていく方法もおすすめです。学費の積み立てや準備は、お子様が小さなうちから始めることが大切なのです。
FPフローリストでは、経験豊富なFPが、ご家庭の事情に合った教育費準備についてご相談を受けています。お子様たちを希望の進路に進ませてあげるためには、今からのどのような手を打って行くべきかをご一緒に検討いたします。教育費は総額いくらかかるのか、どのように捻出すべきか又は優遇制度や奨学金を活用するのか、さらに収入ダウンや大黒柱の死亡など予定通りの教育費準備ができなくなるリスクに備える方法等、死角のない教育費準備をサポートしています。お子様の進路の夢を叶えるため、お力になれれば幸いです。ぜひ一度FPフローリストにご相談ください。
※本コラムは共済・保険ガイドサイト<お金と仕事と共済>にて執筆したコラムを転載しております。
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