働く妻なら知っておきたい4つの扶養の壁
(今回はご主人が会社員または公務員、奥様がパートタイマーなどの給与所得のみ、という前提で解説します。制度は2017年10月現在の情報です。)
扶養の壁は4つ
配偶者の扶養に入るか、入らないかという判断の基準になる金額のことを、一般的に「扶養の壁」と呼んでいます。では、この壁を整理してみましょう。
金額順に並べてみます。
① 「103万円の壁」(2018年から「150万円の壁」に改正されます)
② 「106万円の壁」
③ 「130万円の壁」
④ 「141万円の壁」(2018年から「201万円の壁」に改正されます)
…と4つあるのですが、この壁はさらに大きく2種類に分かれます。
所得税に関する2つの壁
まず1種類目は所得税を計算するうえでの壁です。①の「103万円の壁」(「150万円の壁」)と④の「141万円の壁」(「201万円の壁」)は、配偶者控除(または配偶者特別控除)の対象となるかどうか、の基準です。
(※配偶者(特別)控除は、ご主人の合計所得金額が1,000万円以下の場合に受けられます。)
103万円というのにはもう一つ、1年間の給与がこれを超えると税金を払わなければいけない、という意味もあります。これは所得税法上
給与収入103万円-給与所得控除65万円-基礎控除38万円=所得はゼロ
という計算になるからです。
103万円を1円でも超えるといきなり控除がなくなる(税金の負担がグンとアップする)、というのは厳しいので、ここで④の「141万円の壁」すなわち「配偶者特別控除」の基準が出てきます。これは、103万円を超えて141万円まで、段階的に38万円~3万円まで、控除できる金額が異なります。(具体的な控除金額は国税庁のHPなどをご確認ください。)
2018年からは、この「103万円」「141万円」がそれぞれ「150万円」「201万円」にアップすることになりました。ここで『よし!年収150万円目指そう!』と思った方は、もう1種類の壁である社会保険の制度上の壁に注意が必要です。
社会保険に関する2つの壁
2つ目は社会保険(健康保険・厚生年金・介護保険)の制度上での扶養を判断する基準です。上記③の「130万円の壁」の意味は、収入の合計金額が130万円未満であれば、ご主人の被扶養者となることができる、ということです。
逆にいうと、130万円以上の場合は扶養に入ることができず、
(1)自分が働いている会社で厚生年金に入る
(2)国民健康保険・国民年金に入る
以上のどちらかとなり、保険料を負担することになります。
(どちらかを選択する、という意味ではありません。(1)は、適用される場合のみ。)
例えば、その年の給与が131万円だった場合、保険料負担が発生して、年間10万円以上を支払わなければならなくなるため、129万円の人と131万円の人とでは、手取り金額の逆転現象が起きてしまいます。
また、このうち、一部の方は②の「106万円の壁」も該当してきます。これには以下の条件があり、すべてに該当すると社会保険の扶養の壁が130万円から106万円になります。
・勤務時間が週20時間以上
・1カ月の賃金が8.8万円(年収106万円)以上
・勤務期間が1年以上見込み
・勤務先が従業員501人以上の企業
・学生は対象外
扶養の壁を超えるメリットもあればデメリットもある
デメリットは分かりやすいですね。税金や保険料の負担が増えることと、ご主人の会社でこれとは別に扶養手当等が給与として支給されている場合、支給されなくなってしまう可能性があることです。
しかし、メリットについてもよく検討してみる必要があります。
・将来受取る年金給付額が増える(厚生年金の場合)
・病気やケガで仕事ができなくなってしまったときに傷病手当金がもらえる
・(31日以上の連続雇用、週20時間以上勤務であれば)雇用保険の対象にもなるので、失業手当や育児休業給付、介護休業給付なども該当してくる可能性がある
と、長い目で見た場合のメリットはとても大きいです。
(※ただし、契約社員などで雇用契約上会社の社会保険に加入できない場合、130万円を超えても該当しない場合があるので注意。)
さらに金銭的なメリットだけでなく、仕事にやりがいや楽しさを感じたり、充実した人間関係を築いたり、スキルを手にしたりと、無形のメリットが挙げられます。
いかがでしょうか。壁を気にして、年末に仕事の量を調整するよりも、思い切って壁をこえてみるほうがいいかもしれません。制度も時代とともに変わっていきますので、最新の情報を入手した上で、ご自身のキャリアプランをもう一度検討されてみてはいかがでしょうか。
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