子どものいない夫婦の相続は要注意!
突然、義兄の息子が現われ…
Tさんは60代の主婦です。夫との間には子どもがいませんが、大変仲睦まじく暮らしてきました。ところが夫が突然事故で亡くなりました。夫の相続財産は自宅(評価額3千万円)と、預貯金と死亡保険金合計で1千万円でした。夫のご両親と唯一の兄弟である義兄はすでに他界しています。
Tさんは、この財産であれば相続税がかからないらしいことを知って安心し、夫がのこしてくれたお金と遺族年金で、これからの人生をつつましく暮らしていこうと、心の整理をしていました。ところが、葬儀が終わって1カ月経った頃、面識のほとんどなかった義兄の息子(甥)がTさんを訪ねてきました。甥は、自分にもTさんの夫の財産を受け取る権利があるから、遺産を分けるようにと主張します。
Tさんは突然のことで何が起こったのか理解できず、びっくりしてしまいました。
代襲相続という死角
読者のみなさんは、Tさんが財産を分けるべきだとお考えになりますか?
実はこのケースの場合、夫の遺言書がなければ、甥の主張通り、遺産を分けざるを得なくなってしまいます。遺産を受け取る権利のある人=法定相続人は、子どもがいれば配偶者と子ども、子どもがいなければ配偶者と親、子どもも親もいなければ配偶者と兄弟姉妹と定められています。
Tさんの場合、義兄はすでに他界していますが、その場合、代襲相続と言いまして、兄弟姉妹の子どもに権利が引き継がれます。したがって甥は財産の一部を相続する権利を主張できるのです。
では、Tさんには夫の財産をすべて受け取る方法はなかったのでしょうか?
いいえ、実は方法はあるのです。もし夫が生前に「財産をすべてTさんに遺す」という遺言書を作成していれば、Tさんは夫の全財産をトラブルなく相続することができました。
話がややこしくて混乱してしまうかもしれませんが、法定相続人と遺留分と遺言書の関係を理解すれば、解決方法がわかります。
子どもがいないからこそ
遺留分というのは、民法で定められた一定の相続人が、最低限相続できる財産のことです。法定相続分の2分の1が主張できる金額の上限です。遺言書などでその権利が侵害された場合は、「遺留分減殺請求」をすることができます。
ただし、相続人が兄弟姉妹の場合、遺留分の権利はありません。つまり、先ほどの事例のケースでは、法定相続人はTさんと甥の2人ですが、「全財産をTさんにのこす」という遺言書があれば、甥には遺言書の内容を覆してまで財産分けを主張する権利(遺留分)がないため、Tさんが全財産を相続することができるわけです。
ちなみにTさんの夫の両親がご健在だった場合は、財産の6分の1の遺留分を主張できる権利が発生します。
Tさんは専門家に甥との交渉に入ってもらい、法定相続よりは少額の遺産を甥に分けることで合意し、遺産分割協議を作成してもらうことができました。
お子さんがいないご夫婦の相続で、Tさんのように心労するケースを防ぐためには、遺言書の存在がとても大切になってきます。お子さんのいない方は、自分、そして配偶者のために、遺言書で相続の準備をしておくことを強くお勧めします。
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