資産運用用語集
さ行
- 債券
国や県・企業などが、お金借りるために発行する借用証書のこと。額面当たりの利率は、発行する時点で決まっている。発行元が破産しない限り、額面金額が保証されている。「額面100万円」の債券でも、市場で売り買いできるものは102万円や98万円といった値段が付くことがあり、購入金額=額面金額にはならない。
- 債券金利
債券(固定利付債券)は、毎期の利払いと満期の償還額が定められており、デフォルト(債務不履行)が生じない限り、確定利回り(将来に生じるキャッシュフローが確定している)である。債券の現在価値は、金利で割り引いて評価されるため、景気が回復して金利が上昇すると投資家が判断すれば、債券価格は下落する。また、長期の債券ほど、金利の割引効果が大きくなるため、価格変動リスクは大きくなる。
例えば、金利水準が2%で価格が100円の債券を例にとると、市場金利が2%を超えて上昇した場合、この債券の魅力は低下し価格は100円を下回ることが予想される。逆に市場金利が2%よりも低下した場合、この債券の魅力は上昇し価格は100円を上回ることが予想される。
- 裁定取引
同一の価値を持つ商品の一時的な価格差が生じた際に、割高なほうを売り、割安なほうを買い、その後、両者の価格差が縮小した時点でそれぞれの反対売買を行うことで利益を得ようとする取引のこと。機関投資家などが、リスクを低くしながら利ざやを稼ぐ際に利用する。株価指数等の現物価格と先物価格を利用した取引などが代表的な例だが、為替、金利、商品(コモディティ)など、さまざまな市場で行われている。
裁定取引は、機関投資家などが大きな資金でサヤ抜きを狙う手法として使われるのが一般的なため、その取引が市場全体に与える影響も比較的大きく、マーケットを見るうえでは、その動向もチェックしておくことが有効となる。裁定取引は、その取引を積極的に行う市場参加者が増えるほど、市場の歪みが短時間で解消される方向にはたらくため、適正な価格形成に役立っているともいわれている。
- 先物
「ある商品を、将来(3ヵ月後など)に決められた価格で取引する契約」という金融商品。売りも買いも両方できるため、これから価格が下がっていくと思う場合にも、利益を出せることがある。専門知識が必要で、リスクの高い投資商品。
- 先物取引
予め決められた日(決済期日)に、取引の時点で決められた価格で商品を売買することを約束する取引のこと。「買い」からも「売り」からも取引を始めることができる。売買される商品は、大豆やとうもろこしといった農産物や石油、貴金属、株価指数(日経225先物など)、金利などがある。
約束の履行を確実なものにするために、実際の取引の10%程度の証拠金を差し入れる「証拠金取引」の一つで、レバレッジ効果がはたらくため、高いリターンが得られる可能性もある代わりにリスクも高くなる。
- 指値注文と成行注文
希望する売買価格(買いの場合は上限価格、売りの場合は下限価格)を指定して発注する方法を指値(さしね)注文という。例えば、株式の売買において、「A株式を500円で1,000株買いたい」とか、「B株式を500円で1,000株売りたい」などといった注文をいう。買い注文は、指定した値段以下の売り注文が出れば約定でき、売り注文は、指定した値段以上の買い注文が出れば約定できる。
一方、「いくらでもいいから買いたい」とか、「いくらでもいいから売りたい」といった値段を指定しない注文方法を、成行(なりゆき)注文と呼ぶ。
尚、「500円まで下落したら成行で売り」とか、「500円まで上昇してきたら成行で買い」というような、通常の指し値注文とは逆のかたちの「逆指値注文」という注文方法もある。
- サステナビリティ
持続可能性のこと。従来は環境問題において用いられることが多い言葉であったが、1987年の環境に関する国連の委員会において、「Sustainable Development(持続可能な発展)」という単語が用いられて以降、企業の社会的責任(CSR)に係わる重要な要素として用いられるようになった。Sustainable Development(持続可能な発展)は、「将来世代のニーズに応える能力を損ねることなく、現在世代のニーズを満たす発展」と定義されている。これに基づき、企業にも地球環境の保全や社会的制度・秩序の維持・発展に貢献しつつ、自らも社会に認められて長期的な繁栄を目指すという取り組みが求められるようになった。
- サムライ債
海外の発行体(国際機関、外国の政府・政府系機関・地方公共団体、外国民間企業等)が、日本の投資家向けに日本国内市場で発行する円建ての債券のこと。購入金や利子や償還金の支払いなどが全て円で行われるので、為替リスクがない。
円建てであっても、日本国外で発行されるものは「ユーロ円債」と呼ぶ。ここでいう「ユーロ」は、通貨が自国市場以外で取引される場合に、その取引市場を「ユーロ市場」と呼ぶことに由来しており、欧州統一通貨であるユーロとの直接的な関係はない。
- CSR(Corporate Social Responsibilityの略)
企業の社会的責任のこと。企業の責任を、利益を上げて法的責任を果たすという経済的・法的側面だけでなく、企業活動を通じて地域や社会の要請に対する積極的な貢献にまで広げようとした考え方。社会・環境への価値追求と事業活動そのものを統合させ、環境・社会面の考慮と経済的リターンは両立させるべきものだという考え方にもつながっている。
2010年11月、国際標準化機構(ISO)は、社会的責任(Social Responsibility)に関するガイドラインとしてISO26000を発行した。その中で「企業の社会的責任の目的は持続可能な発展(サステナビリティ)に貢献すること」と規定し、企業は利益を追求するとともにその持てる力を社会的課題の解決に向けて、社会の持続可能な発展に寄与すべきであるということを示した。日本では経団連がISO26000の考え方を取り入れて改定した企業行動憲章が、企業のCSR活動のガイドラインとして活用されている。
- CDS(Credit Default Swapの略)
企業の信用リスクを取引するクレジット・デリバティブ(credit derivative)の一種で、債権の譲渡を伴わずに信用リスクをヘッジできるスワップ取引のことをいう。例えば、A社の債権者であるB社はA社の信用リスクを負うが、A社のCDSをC社から購入することで、たとえA社が倒産しても、A社の債務をC社に肩代りしてもらうことができる。このとき、A社の信用リスクが高くなればCDSの価格(プレミアム)は上がり、信用リスクが低くなればプレミアムは下がる。
- GDP(国内総生産 Gross Domestic Productの略)
1年間同じ国に住んでいる人々によって新たに生み出された生産物やサービスの付加価値の合計のこと。日本企業が海外で生産した商品やサービス、商品の原材料費などは含まれない。GDPは生産数量に市場価格をかけて生産されたものの価値を算出し、そのすべてを合計することで求められるが、単純に合計したものを名目GDPといい、そこから物価の変動による影響を取り除き、その年に生産された財の本当の価値を算出したものを実質GDPという。
また、GDPの前年度と比べた増減を見ることで、国内の景気変動や経済成長を推定することができるが、それを「%」で表したものを経済成長率という
- CPI(消費者物価指数 Consumer Price Indexの略)
消費者が購入する商品・サービスなどの物価の動向を把握するための統計指標で、総務省から毎月発表されている。全国と東京都区部の2種類の指数がある。
全ての商品を総合した総合指数(CPI)の他、価格変動の大きい生鮮食品を除いた500品目以上の値段を集計して算出される「コアCPI」や、食料(酒類を除く)及び石油・石炭・天然ガスなどのエネルギーを除いた「コアコアCPI」がある。
「コアコアCPI」は、天候や為替レート等による変動要因を排除することで経済要因のみによる物価変動を把握しやすいようにした指数で、世界的には中央銀行等での金融政策における判断材料として使用されるのはこの「コアコアCPI」である(尚、日本のコアコアCPIは世界的にはコアCPIと呼ばれるものに相当する)。
- GDPギャップ
経済全体の総需要と総供給との乖離のことをいい、需給ギャップとも呼ばれる。一般的には、実質GDP(総需要)と潜在GDP(総供給)の差で求められる。潜在GDPは労働や資本が過去の平均的な稼動状態にある時のGDPを推計して求めることが一般的であり、労働や資本が平均的な稼動状態にあるときにGDPギャップはゼロとなり、それよりも稼働率が高ければプラス、低ければマイナスとなる。GDPギャップがプラスとは、総需要が総供給を上回る需要超過の状態であり、インフレの傾向がでることから、インフレ・ギャップともいわれる。逆に、総供給が総需要を上回り需要不足となると、GDPギャップはマイナスになり、デフレの傾向がでることから、デフレ・ギャップともいわれる。
- GPIF(Government Pension Investment Fundの略)
厚生労働省所管の独立行政法人である年金積立金管理運用独立行政法人のこと。日本の公的年金のうち、厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行っている。年金保険料から集められた公的年金積立金は、厚生労働大臣の預託により、GPIFが信託銀行や投資顧問会社などの運用受託機関を通して、国内外の債券市場や株式市場で運用し、運用収益とともに年金給付の原資としている。
公的年金という性質上、長期的に安全かつ効率的な基本ポートフォリオ(資産構成割合)が組まれているが、近年は運用環境改善の流れから、リスク運用の比率を高める傾向にあり、国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%となっている。
GPIFが運用する資産は130兆円を超え、アメリカ合衆国の社会保障年金信託基金に次ぐ世界第2位の資産規模となっている。
- 時価総額
個別株式や投資信託などが時価で総額いくらになっているかを示す金額。株式の場合、株価×発行済株式数で求められる。投資信託の場合は、基準価格×購入口数の総数。時価総額が増えるのは、基準価格が上がった場合と、発行数(購入数)が増えた場合。
- 自己資本比率
総資本(資本+借入)のうちどの程度が自己資本(株主資本)で占められているかを示す指標。自己資本比率が大きいほど、その企業の運営は安定しているといえる。
- 私募投資信託
少数(50人未満)の投資家、あるいは省令で定められた適格機関投資家を対象として募集する投資信託のことを指す。
1998年の証券投資信託法(現在の投資信託及び投資法人に関する法律)の改正により、私募投資信託制度が導入され、私募投資信託の設定が可能になった。
私募投資信託は、公募投資信託と比較して解約の頻度が低いので、長期的な視野に立った運用計画が立てやすいというメリットがある。
- シャープレシオ
超過リターン(安全資産から得られる収益を上回った超過収益)をリターンの変動度合い(=リスク)を示す標準偏差で割ったもので、この数値が高いほどリスクを取ったことによって得られた超過リターンが高いことを意味する。
ファンドの場合、
シャープレシオ = (ファンドの平均リターン-安全資産利子率) ÷ 標準偏差
で計算され、安全資産利子率(リスクフリー・レート)には、日本では無担保コールローン(金融機関相互間の超短期の資金の融通)や長期国債のレートなどが使用される。
異なる投資対象を比較する際に、同じリスクならどちらのリターンが高いかを比べるための指標となる。リスク調整後のリターンを測るものとして、投資信託の運用実績の評価などにも利用される。
資本資産評価モデル(CAPM)の創始者であるウイリアム・シャープ博士が考案したことから、シャープレシオと呼ばれている。
- ジャスダック
東京証券取引所が運営する新興企業向けの株式市場で、信頼性、革新性、地域・国際性といった3つのコンセプトを掲げている。一定の事業規模と実績を有する成長企業を対象とした「スタンダード」と、特色ある技術やビジネスモデルを有し、将来の成長可能性に富んだ企業群を対象とした「グロース」という2つの異なる区分を設けている。
ジャスダックは、1963年に日本証券業協会が創設した店頭登録制度が起源になる。1983年には、成長・ベンチャー企業向けの店頭売買有価証券市場(店頭登録市場)となり、証券取引所市場の補完的市場として位置づけられた。2010年には、大阪証券取引所の新興企業向け市場であるヘラクレス(旧ナスダック・ジャパン)と、ジャスダック内の新興企業向け株式市場であるNEOを吸収統合した。
- ショーグン債
海外の発行体(国際機関、外国の政府・政府系機関・地方公共団体、外国民間企業等)が、日本国内市場で発行する外貨建ての債券のことをいう。金利が通常の外貨建て債券なみの水準であり、資金の払込みや利子の支払い、元本の償還も全て外貨で行われ、発行場所が日本であるということ以外、その性質は通常の外貨建て債券と同じである。
発行通貨の自国市場以外の市場で発行される債券であるため、ユーロ債の一つに位置付けられる。
- 住宅ローン金利
住宅ローン金利は以下の3つのタイプに分けられる。
・変動金利:半年に1回、各金融機関の短期プライムレートをベースレートにして金利の見直しが行われる。どの金融機関でも選択可能。
・一定期間固定金利:借入当初の金利が一定期間適用されるが、その期間が終了すると再度金利を選択することができる。一定期間固定金利は、円金利スワップレート(同一通貨の固定金利と変動金利との交換を行うスワップ取引における固定金利の交換レート)という市場金利が基準になっている。ほとんどの金融機関で期間が3、5、10年の金利を選択可能。
・全期間固定金利:新発10年物国債の金利を基準とする固定金利が全期間適用される。代表的なものとして最長35年の全期間固定金利のフラット35がある。一部の金融機関で15~35年の金利を選択可能。
- 受託会社
投資信託の場合、投資信託委託会社(運用会社)からの委託を受けて、その指図に基づいて信託財産の保管・管理を行う金融機関のことで、主に信託銀行を指す。受託者は信託財産の名義人となって自己の名前で管理するだけで、信託財産の運用実績や成果については責任を負わない。
- 収益分配金
投資信託の決算期ごとに投資家に分配される収益金のことをいう。投資信託の運用益から経費(信託報酬等)を控除した後、投信会社(委託会社)が信託約款で定める収益分配方針に基づき投資家に分配される。この収益分配金が分配の都度支払われる投資信託を分配型、再投資されるものを無分配型という。
追加型投資信託における収益分配金は、普通分配金と特別分配金(元本払戻金)に区別される。普通分配金とは、運用において利子・配当金や売買益等から得ることができる分配金のことをいい、課税扱いとなる。一方で特別分配金とは、収益調整金(追加設定で口数が増加すると、信託財産全体の運用収益が変わらないにも関わらず、1口当たりの収益が減少し、決算時の分配原資が薄まることになるが、これを防ぐために追加信託金の元本のうち、既発生収益相当分は元本計上しない。この既発生収益相当分元本のことを収益調整金という。既存の投資家のこれまでの収益を減らすことを防ぐと共に、新規の投資家がこれまでの経費を負担することを避けることを目的とする。運用報告書上は追加信託差損益金として記載される)を原資として支払われる分配金のことをいい、税法上は元本の払戻しとみなし非課税扱いとなる。
- 上場廃止
会社が上場の基準をクリアできなくなり、上場の資格を失うこと。会社が倒産する場合、債務超過などで上場の資格を失う場合、買収・統合などでもとの会社がなくなる場合などがある(他に、自主的に上場をやめるケースもある)。
- 証券会社
株などの有価証券の販売、引き受け、仲介などを行う企業のことをいう。日本では金融商品取引法で規定している金融商品取引業者のうち第一種金融商品取引業を行う企業を指し、有価証券関連業として定義される。
主な業務としては、投資家の売買注文を証券取引所に伝えるブローカー業務や、証券会社自身が株式の売買を行うディーラー業務、発行証券を買い取って投資家に売るアンダーライター業務、発行証券を一時的に預かって投資家に売るセリング業務などが挙げられる。
- 新株予約権
株式会社(発行体)に対し新株または自己株式の交付を受けることができる権利をいう。株式を特定価格(行使価格)で購入できる権利であるため、特定価格より時価等が上昇している場合には、行使により利益を得ることができ、下落している場合には行使しないか、または放棄することができるため、コールオプションとしての性格を有しているといえる。
新株予約権は設定契約を会社と締結することにより発生するが、この契約において特定の行使価格や時期、有償無償の別などの詳細な条件が定められる。上場会社においては、発行状況は新株予約権等の状況として有価証券報告書への開示対象となっている。
- 信託銀行
一般の銀行業務と併せて信託業務を行う銀行のことで、顧客の現金だけでなく、株や債券などの金融資産、不動産などを預かり、管理、運用を行う。
投資信託の仕組みの中では、投資家から集めた資金を管理し、運用会社からの指示で資産の売買を行っている。仮に信託銀行が破綻した場合でも、信託財産は信託銀行自身の財産とは区分して管理(分別管理)することが法律で義務づけられており、投資家の資産はすべて保護される。
- 信託財産
投資信託が保有している資産のこと。投資信託は運用方針に従って投資家から集めた資金で株式や債券などの資産を売買する。投資信託が保有する信託財産は信託銀行に預けられ、運用会社からの指示によって売買される。
- 信託財産留保額
投資信託を解約する際に投資家が支払う費用のことで、手数料のように運用会社や販売会社の収益とはならず、売却時のペナルティ料として投資信託に残す財産のことをいう。投資信託が保有する株式や債券などの資産を換金するためには、手数料等の費用が発生するが、この費用を解約時に投資家が負担することで、投資信託を保有し続ける投資家へ迷惑をかけないようにする制度。留保額は基準価格や分配金に反映される。
- 信託報酬
投資信託の管理・運用のために、投資家が投信信託を保有中支払い続ける費用のこと。投資信託の種類によって信託報酬は異なる。一般的に特定の指数への連動を目指すインデックスファンドのほうが、ファンドマネージャーの手腕に依存するアクティブファンドより信託報酬が安い。信託報酬は、投資信託を販売する販売会社、信託財産を管理・運用する信託銀行、運用の指示を出す運用会社で分配される。
投資家が負担する費用には、保有中にかかる信託報酬の他、購入時にかかる販売手数料や解約時にかかる信託財産留保額がある。
- 信用取引
一定の保証金(委託保証金)を証券会社に担保として預けることにより、保証金の数倍の金額の株式取引ができる制度のこと。少ない元手で大きな利益をあげる可能性があるとともに、通常の株式取引では行えない「売り」からの取引が行えるので、下落局面でも利益を得る可能性がある投資機会を提供している。
保証金は現金だけでなく、株や債券などの有価証券も担保として利用することができる。
信用取引は一般信用取引と制度信用取引に区分される。一般信用取引とは、証券会社側で決めた金利や返済期限に基づき投資家と証券会社の間で結ぶ契約のことをいう。一方、制度信用取引とは、証券取引所が公表している制度信用銘柄選定基準を満たした銘柄のみを対象としておこなわれる信用取引のことで、返済期限は6ヶ月以内と決められている。金利も証券取引所ごとに決められたものとなっており、通常、一般信用取引に比べて低めに設定されている。
- 信用リスク(発行体リスク)
債務者が財政難、経営不振などの理由により、債務不履行(利息や元本などをあらかじめ決められた条件で支払うことができなくなること)が起こる可能性をいう。
信用リスクは、債務者のリスクが反映されるあらゆる取引に波及するリスクであり、信用リスクにさらされている金融商品としては、貸出債権や国債、社債、金融債等の債券、株式やクレジット・デリバティブなどが挙げられる。
信用リスクを知るためには、信用格付が指標となる。信用格付は、ムーディーズやスタンダード&プアーズなどの格付機関が特定の有価証券や債務者の信用リスクを判断し、信用リスクの程度を信用力が高いものから順にAAA、AA、A、BBB、BB、B、CCC、CC、Cなどの記号で表す。
- スイッチング
投資信託間の乗り換えのことをいい、スイッチングできる投資信託間では、乗り換えする投資信託の手数料が無料または割引になるなどの優遇がある。具体的な商品としては、同一の投資信託で為替ヘッジありとヘッジなしのタイプの乗り換えや、投資目標によって資産配分が複数用意されているライフサイクル型の投資信託の「債券重視型」、「株式重視型」などのコース間のスイッチングや(トル)、ブルベア型の投資信託で、ブル型とベア型のコース間のスイッチングなどがある。
切り替え時に信託財産留保額などを徴収される場合があり、頻繁にスイッチングをすると、その分資産が目減りしてしまう場合もある。
- スイングトレード
株価の動きだけを見て、短期間(数日~数週間)の売買を繰り返し、利益を出そうとする投資方法。期間が数週間~数ヵ月のポジショントレードというものもある。
- スタグフレーション
景気が後退していく中でインフレーション(物価上昇)が同時進行する現象のことをいう。景気停滞を意味するスタグネーション(Stagnation)とインフレーション(Inflation)を組み合わせた合成語。通常、景気の停滞は、需要の落ち込みを伴うことからデフレ(物価下落)要因となるが、原油などの原材料や素材関連の価格上昇などによって不景気の中でも物価が上昇することがあり、この現象のことをスタグフレーションいう。景気後退で賃金が上がらないにもかかわらず物価が上昇し、資産価値が減っていくという、生活者にとっては厳しい経済状況である。
- スチュワードシップ・コード(Stewardship Code)
機関投資家が、投資先企業の中長期的な成長を促すために、投資先企業に対して監視や対話などを行う際に求められる行動規範のこと。2010年にイギリスで初めて定められた。日本ではこれを参考にして、金融庁が2014年2月に日本版スチュワードシップ・コード(「責任ある機関投資家」の諸原則)を制定・公表した。
投資先企業の企業価値を向上し、受益者のリターンを最大化する狙いの下、(1)受託者責任の果たし方の方針公表、(2)利益相反の管理に関する方針公表、(3)投資先企業の経営モニタリング、(4)受託者活動強化のタイミングと方法のガイドラインの設定、(5)他の投資家との協働、(6)議決権行使の方針と行使結果の公表、(7)受託者行動と議決権行使活動の定期的報告、を行うべきとする7つの原則で構成されている。
スチュワード(steward)とは執事、財産管理人の意味。
法的拘束力に縛られない自主規制であるが、コンプライ・オア・エクスプレイン(Comply or Explain)として、各原則を順守するか、順守しないのであればその理由を説明するよう求められている。
- ストックオプション
会社が、業績向上のインセンティブとして、また、労働や業務執行等の対価として、役員や従業員等に対し付与する新株予約権のことをいう。新株予約権は、あらかじめ定めた一定の期間内(行使期間)に、あらかじめ定めた額(払込価額)の金銭等を拠出することによって会社から株式の交付を受けるという権利である。一般的に、会社の業績向上や企業価値の増大に対する意欲、株主重視の経営意識等を高めるためのインセンティブを与えることを目的としている。
- スペキュレーション取引
投機取引とも呼ばれ、様々な相場変動を活用して、売買によるキャピタルゲインの取得を目的とした取引のことをいう。実需を裏付けとした安定的な商品売買を目指すのではなく、株式や為替や商品の価格変動によって生じる差益だけを得ることに主たる目的としている。
- スワップ取引
デリバティブ取引の一つで等価のキャッシュフローを交換する取引の総称。スワップの代表的な商品としては、金利スワップ、通貨スワップ、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)がある。
金利スワップは、同じ通貨の異なる種類の金利を交換する取引のことをいう。例えば、変動金利建て借入れを行った場合、元本と期間が同一の固定金利と交換する金利スワップを使うことで、金利の上昇リスクを回避することができる。
通貨スワップは、異なる通貨の異なる種類の金利を交換する取引のことをいう。例えば、ドル建て債券を購入した場合、利息と償還元本がドル建てで行われるが、為替変動リスクを回避したい場合、通貨スワップを同時に使うことで、円建て債券投資を行った効果を生み出すことができる。
- 請求目論見書
投資家が請求した場合に、交付することが義務付けられている目論見書のことで、ファンドの詳細情報として、ファンドの沿革、管理や運営についての概要、受益者の権利についての説明、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表や純資産額計算書を含む詳しいファンドの経理状況などが記載されている。
- 政策金利
中央銀行が金融市場の調節手段として用いる短期金利のことをいう。中央銀行は、政策金利を上げ下げすることにより、金融政策に従いながらマーケットの金利を実体経済に合った水準に誘導している。その対象については国によって異なり、日本では、日銀が無担保コール翌日物金利(金融機関同士で資金の過不足分を期間1日として貸し借りするコール市場のレート)を、米国では、FRBがフェデラル・ファンドレートを採用している。
一般に政策金利は、景気が良い時は、利上げによって景気の過熱やインフレを抑制し、逆に景気が悪い時は、利下げによって市場金利を低めに誘導して、お金が流通しやすくしている。
- セレクトファンド
投資先や運用スタイルなどが異なるいくつかのファンドをひとまとめにして、その中から投資家が自由に選んで投資できる仕組みのファンドのこと。セレクトファンドの中で低率もしくは無料の手数料で乗り換え(スイッチング)ができるため、取引コストを抑えながら、相場状況に臨機応変に対応することができる。また、資金の待機専用ファンドであるマネーポートフォリオが同時に設定されているものもあり、相場変動があるときなどに、投資資金を一時的に当該ファンドに待機させることで、相場変動リスクを回避することができる。
セレクトファンドには、国内株式を業種・産業・テーマ別などに区分して構成する「業種別選択型」や、時価総額等の規模別に区分して構成する「規模別選択型」、投資地域別に区分する「地域別選択型」などがある。