資産運用用語集
た行
- TIBOR(タイボー:東京銀行間取引金利 Tokyo Interbank Offered Rateの略)
東京市場における銀行間平均取引金利のこと。全銀協TIBOR運営機関が、各リファレンス・バンク(レート呈示銀行)から呈示されたレートを集計し、営業日ごとに公表している。無担保コール市場の実勢を反映した日本円TIBORと、日本のオフショア市場の実勢を反映したユーロ円TIBORの2種類がある。各リファレンス・バンクが呈示するレートは、例えば、三井住友銀行の場合、「三井住友銀行TIBOR」と呼び、全銀協TIBORとは異なる条件となる場合がある。
- たこ足配当
企業が原資となる十分な利益がないにもかかわらず、過分な配当金を出すことをいう。配当金の原資の一部を、資産売却や、積立金の取り崩しなどにより捻出するため、財務状況の悪化を伴う場合が多い。タコが自分の足を食べるのに似ていることから、このように表現される。
- 単位型(ユニット型)投資信託
最初の募集期間だけに購入機会が限られ、設定後は償還まで資金の途中追加ができない投資信託のこと。あらかじめ決められた信託期限があり、満期が到来したら自動的にすべての信託財産が換金され、投資家に持ち分に応じた資金が払い戻される。追加購入が制限されることにより、純資産が大きく変動しにくく、安定的な運用ができるというメリットがある。
同じ投資方針で定期的に募集・設定される「定時定型投資信託」や、投資家のニーズやマーケット環境に応じてスポットで設定される「スポット型投資信託」などがある。解約については、いつでも解約できる商品もあるが、ある一定期間(クローズド期間)解約ができない商品も多く、条件は商品ごとに異なる。
これに対し、当初募集期間以降でも購入が可能な投資信託を、追加型投資信託という。
- 追加型(オープン型)投資信託
運用開始後もいつでも購入可能な投資信託のこと。当初募集期間中は、それぞれの投資信託で決められた価額での購入になるが、運用開始後は、時価である基準価額で購入することができる。信託期間が無期限もしくは長期(10年など)である反面、いつでも時価で換金ができることから、投資家はタイミングを見て取引をすることができる。運用面でも、時間的な分散投資が容易であるなどのメリットがある。
これに対し、当初募集期間のみしか購入できない投資信託のことを単位型投資信託という。
- 通貨選択型ファンド
投資対象資産(株式や債券など)に加えて、円以外の投資対象通貨を選択することができるように設計された投資信託のこと。
投資対象資産の価格変動や配当等による収益のほか、為替取引によるプレミアム(金利差収益)や、選択した通貨の対円レートの上昇分の為替差益を得ることが期待できる(ただし、対円レートが下落(円高)に動いた場合には、為替差損が発生することになる)。
一般に通貨選択型ファンドの投資対象資産は、投機的格付が付与されることが多いハイ・イールド債や、新興国債券など、ハイリスク・ハイリターンの資産が多い。
- 長期投資
数年間にわたって株を保有し続ける投資手法のことをいう。価格の上下動に一喜一憂しないで、景気や企業業績の向上などから生まれる価格上昇の好循環をじっくりと待つタイプの投資スタイル。著名な投資家のウォーレン・バフェット氏の投資手法も長期投資に属するといわれている。長期投資は、短期的な価格変動が時間の経過によって相殺されることでリターンが安定するというメリットがある。
- TOB(株式公開買付 Take Over Bidの略)
上場会社の株式を、あらかじめ買付価格、買付予定数、買付期間等の条件を公告し、条件に同意した株主から市場外で買い付ける公開買付けのことをいう。
会社の支配権等に影響を及ぼすような、市場外における株式の買い付けについて、透明性・公正性を確保する観点から、金融商品取引法により定められた制度。株主に対して平等に株式の売却機会を提供することによる、投資者の保護を目的としている。
発行会社自身が自社株に対して公開買付けを行うケースのほか、第三者が対象会社の経営陣から賛同を得て行われる「友好的公開買付け」や、対象会社の経営陣から賛同を得ないで行われる「敵対的公開買付け」がある。
- TTB(電信買相場 Telegraphic Transfer Buying Rateの略)
金融機関が顧客から外貨を買う(=顧客が外貨から円へ両替する)際のレートのことをいい、TTM(金融機関が外国為替取引をする際の基準となるレート)から為替手数料(通貨を交換する際に顧客が支払う手数料)を引いて算出する。海外旅行から帰国する際や、外貨建て金融商品の売却時などにこのレートが適用される。TTMは金融機関によって異なる。手数料は、外貨の種類や取扱金額、また金融機関によって異なる。
- TTM(電信仲値相場 Telegraphic Transfer Middle Rateの略)
金融機関が外国為替取引をする際の基準となるレートのことをいう。「電信仲値相場」や「公表仲値」、または「仲値」とも呼ばれる。金融機関が毎営業日9時55分のインターバンク市場の為替取引実勢レートを参考にして決定し、午前10時頃に発表している。その後に過大な為替変動がない限り、当日中、適用される。金融機関によってTTMは異なる。TTMは対顧客向けの為替レートであるTTS(電信売相場)とTTB(電信買相場)の中間値になる。
- TTS(電信売相場 Telegraphic Transfer Selling Rateの略)
金融機関が顧客へ外貨を売る(=顧客が円から外貨へ両替する)際のレートのことをいい、TTM(金融機関が外国為替取引をする際の基準となるレート)に為替手数料(通貨を交換する際に顧客が支払う手数料)を足して算出する。海外旅行に行く際や、外貨建て金融商品を購入する際などに、このレートが適用される。TTMは金融機関によって異なる。手数料は、外貨の種類や取扱金額、また金融機関によって異なる。
- ディスインフレーション
景気循環の過程で、金融政策等により物価の上昇率を低下させることに成功し、インフレーションからは脱したが、需要減退を伴うデフレーションには陥っていない状態のことをいう。
バブル崩壊後の日本経済は、長くこのディスインフレーションにあったとされる見方もある。なぜなら、バブル期以降の日本経済は景気後退が長期化し、賃金上昇率が低下したが、円高が進行したことで輸入コストの低下をもたらし、物価の強い安定化要因となるとともに、実質賃金の安定化ももたらした。このように低位だが安定した物価により、デフレスパイラルは発生しておらず、ディスインフレーションの状態にあったという見方である。
- デイトレ
1日で株の売買を終わらせて利益を出そうとする投資方法。一般的に数時間から数日程度の短期売買を繰り返すことを指す。
- 定性評価
投資家が投資対象の選択・検討時に数値に表れない部分を分析することをいう。投資信託などの運用成績の評価にあたっては、委託会社(実質的な運用会社)の運用哲学、運用体制、リスク管理体制、ファンド・マネージャーの資質、人事制度などが対象となる。株式や債券等の選択時には、経営方針や人事制度、社風などが分析対象となる。
定量評価が過去のデータに基づいているのに対し、定性評価では、将来の変化に対する推測のための材料が提供される。両者は補完関係にあるといえ、定量評価と定性評価の両面から分析を行うのが合理的である。
- 定量評価
投資家が数値指標を参考にして運用対象を評価する方法のこと。一般的に個別の投資信託の運用評価を行う際には、シャープレシオ等を分析対象とする。また、株式等の選択時には、製品の市場占有率や売上げの変化率といった事業の強さを示す数値、営業利益、ROEといった財務指標、PERやPBR、配当利回りといった株価指標、売買高などの流動性を示す指標などを分析対象とする。
- ディマンド・プル・インフレ
景気拡大や貨幣量の増大などで経済の総需要が高まり、供給が追いつかなくなってしまうために生じる物価上昇現象(インフレーション)のこと。
通貨量(マネーストック)は、景気が好調であるときに拡大するが、好景気で需要が拡大して物価が上昇すると、企業収益が増える。すると賃金(所得)が増えて、さらに需要が拡大する、という好循環が生まれる。このように、ディマンド・プル・インフレは、経済の好循環をもたらすところに特徴がある。
ディマンド・プル・インフレが発生する要因としては、景気の好循環だけでなく、政府や中央銀行が行う財政政策(公共事業等)や金融政策(金融緩和等)などがある。特に、公共事業が原因のインフレを財政インフレ、金融緩和の行き過ぎが原因のインフレを信用インフレと呼ぶことがある。
逆に、生産コストの高騰による供給サイド要因のインフレのことを、コスト・プッシュ・インフレと呼ぶ。
- デフレーション
物価が全般的かつ持続的に下落する現象のこと。「デフレ」と略されることが多い。価格下落が急激であっても、それが一部の商品にとどまる場合や、短期的な場合はデフレとは言わない。株や土地などの資産価格の下落を指して、「資産デフレ」という場合もある。デフレはモノの価値に対する貨幣価値が上昇する現象であり、逆にモノの価値に対する貨幣価値が下落する現象のことをインフレーション、またはインフレという。
- デフレスパイラル
物価の下落が景気に悪影響を与え、それがさらなる物価の下落を招くという形で、相互に影響しながら加速度的に景気が悪化していく現象をデフレスパイラルという。
デフレ下では、キャッシュを大切にして、消費や投資などを控えるようになる傾向がある。また、負債の実質的な価値が上がってしまうため、企業においては、手持ちのキャッシュフローを投資に振り向けず、負債の返済を優先する(バランスシート調整)傾向がある。こうした消費行動や企業行動の委縮が景気の悪化を加速する場合が多い。
また、デフレ時には名目賃金の下方硬直性が起こりやすい。通常は、物価の変動に較べて賃金の変動が遅行するため、物価がプラスのときの賃上げと、物価がマイナスのときの賃下げでは、実質ベースでみると後者の方が有利の場合が多いが、被雇用者は感覚的には名目賃金の下落の方に、より強い抵抗感を覚えやすい。このため、デフレ下では労働分配率が上昇して、企業収益を圧迫しやすくなる傾向がある。以上のような要因などにより、デフレスパイラルが起きると考えられている。
- 投資対象
将来のリターンを期待して、お金や時間などの価値を投入する対象のこと。
- 投資哲学
投資判断の拠り所にする指針のこと。一般に運用の一貫性・安定性はポジティブに評価されやすいため、ファンドなどでは運用における投資哲学に依拠して一貫性のある投資判断をすることが多い。
例えば、アクティブ運用の典型的な投資哲学としては、「バリュー投資」(割安株投資)と「グロース投資」(成長株投資)が有名であり、これらの概念は、運用スタイルという言葉で呼ばれることがあり、それぞれに合わせたベンチマークも考案されている。
バリュー投資の投資哲学は、「企業価値から決まる株式の真の価値よりも株価が安く放置されている企業の株に投資すると、株価が真の価値に近づくはずであり、その過程で他の投資家よりも大きなリターンを得ることが出来る」という考え方である。
一方、グロース投資の投資哲学は、「今後の利益成長率が高い企業の株に投資すると、利益成長を株価が折り込んでいく過程で高いリターンが実現するはずであり、その過程で他の投資家よりも大きなリターンを得ることが出来る」という考え方である。
- 投資信託運用会社
投資信託をつくり、運用している会社。
- トップダウン・アプローチ
投資信託などで組み入れ銘柄を選択する際に用いられるアプローチのひとつで、まず経済成長率や為替・金利動向などのマクロ経済見通しに従って、どのような国や地域の資産に配分するかを決定し、その後、業種別の分析に従って、その資産配分の枠の中で選択する業種を絞り、その業種の中で該当する個別銘柄を決めるという運用方法のこと。マクロの視点から入って、順にミクロな視点に移っていくことから、トップダウン・アプローチと呼ばれる。
- 騰落率
一定期間内に、基準値から価格がどれだけ上がったか(下がったか)を、割合(%)で表したもの。
- TOPIX
東京証券取引所第一部上場全銘柄を対象として、各銘柄の浮動株数に基づく時価総額を合計して算出・公表している株価指数のこと。日経平均株価と並ぶ、日本の代表的な株価指標の一つ。1968年1月4日を基準日として、当時の時価総額を100として算出している。
東証1部全銘柄で計算しているので、日経平均株価(225銘柄)よりも市場全体の値動きを表しているといえるが、時価総額の大きな銘柄(大型株)の値動きの影響を受けやすいといった特徴がある。国内株式で運用される投資信託のベンチマークとしては、日経平均株価よりもTOPIXのほうが多く使われている。
- トラッキング・エラー
「アクティブリスク」とも呼ばれ、ポートフォリオのリターンとベンチマークのリターンとの乖離の大きさを示す指標のこと。
これは、目標とするベンチマークの収益率と運用するポートフォリオの収益率との差(超過収益率)の標準偏差を取った値であり、その計算方法に基づき、実績の収益率から計算する「実績トラッキング・エラー」と、モデルを用いて推定する「推定トラッキング・エラー」に区別される。通常、この乖離が大きいほど、運用するポートフォリオが、ベンチマークに対してリスクを大きく取っていることを意味する。
トラッキング・エラーは、投資信託の運用成果の評価などに使われる。投資信託の場合、この数値が大きいほど、ファンドのリターンがベンチマークから乖離していることを意味する。例えば、インデックスに連動することを目指す、パッシブ運用のインデックス・ファンドでは、推定されるトラッキング・エラーを極力小さくするように運用が行われ、運用実績の定量評価においても、実績トラッキング・エラーが小さいほど優れた運用と評価される。