資産運用用語集
は行
- ハイパー・インフレーション
一般的には、急速な勢いで進行するインフレーションのことをいう。国際会計基準の定義に基づくと、3年間で累積100%を超えるインフレーションのことをいう。
過去には、ドイツで1922~23年に物価が1億倍を超える例や、1945年にハンガリーで月間インフレ率が2万%を記録したことがある。近代では1986年にブラジル、1989年にアルゼンチン、2006年にジンバブエでも発生している。ジンバブエでは、2006年6月から1年間でジンバブエの証券取引所の株価指数が約4万%上昇し、2015年6月には法定通貨のジンバブエ・ドルが廃止され、3.5京ジンバブエ・ドル=1米ドルのレートで回収された。1980年の導入時のレート(0.68ジンバブエ・ドル=1米ドル)と較べると、約5京分の1に下落したことになる。
インフレには、需要が過大となることにより引き起こされるもの(ディマンド・プル・インフレ)、供給側のコスト増によるもの(コスト・プッシュ・インフレ)、通貨の流通量の増大に伴うもの、の主に3種類があるが、ハイパー・インフレーションでは、これらのインフレーションの要因が複合的に、過剰に、急速に起りやすい。
- パッシブ運用
投資信託などの運用手法による分類のひとつで、運用目標とされるベンチマーク(日経平均株価やTOPIXなどの指標)に連動する運用成果を目指す運用手法のことをいう。インデックス・ファンドやETFなどの運用手法として用いられる。一方、ベンチマークを上回る運用成果を目指す運用手法のことを「アクティブ運用」といい、一般的に、投資対象がほぼ同じファンドの場合、アクティブ運用よりもパッシブ運用のほうが、ベンチマークに従って機械的に運用できる分、販売手数料や信託報酬などのコストが低くなっている。
- バランスファンド
株式だけや債券だけという特定の種類の資産に偏ることなく、複数の種類の資産や市場へバランス良く投資する投資信託のこと。少額からでも分散投資の効果が得られるという特徴がある。
バランスファンドの中には、国内株式と国内債券の2つの資産に分散しているものや、外国株式、外国債券を加えた4つの資産に分散しているものなどさまざまなバリエーションがある。また、複数の投資信託で運用を行うファンド・オブ・ファンズ形式のものもある。一般的に分散している資産の種類が多い、また、株式の組み入れ比率が少ないほど、リスク(=収益率の変動幅)が低いとされる。
- バリュー運用
投資信託などの運用手法のひとつで、企業価値などから考えて現在の株価が割安と判断される銘柄に積極的に投資する手法。代表的な投資指標であるPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などを用いて判断し、これらの数値が相対的に低い銘柄を投資対象とする。
- PER(株価収益率:Price Earnings Ratioの略)
企業が実際に出した利益に対して、株価が割高か割安かを判断する為に使われる、代表的な指標のひとつ。企業の税引後の利益を発行株数で割ると、「1株当たりの利益」が出ます。現在の株価を、この「1株当たりの利益」で割るとPERが計算できる。PERは市場の長期金利が上昇すると低くなるという傾向があるが、おおよそ20~30倍以内であれば、株の値段は企業の実力に対して適正または割安といわれている。業種による差は大きいため、一概には言えないが、一般的に30倍を超えると、割高の可能性があると考えられている。
- PBR(株価純資産倍率:Price Book Value Ratio の略)
株式の投資価値を評価する指標のひとつで、株価を一株当たりの純資産で割って算出する。PBRは簿価で見た株主持分の何倍まで株が買われているのかを示している。つまり、この数値が小さければ小さいほど株価は割安であると判断される。PER(株価収益率)はフローの収益力を判断するのに対して、PBRはストックである資産価値を判断するという違いがある。
- VIX指数(Volatility Indexの略)
将来の投資家心理を示す数値で、「恐怖指数」とも呼ばれ、この数値が高いほど、投資家が先行きに対して不安を感じているとされる。シカゴオプション取引所がS&P500種指数のオプション取引の値動きをもとに算出・公表している。
東京証券取引所には、このVIX指数の先物を取引するETF(上場投資信託)も上場している。
- ビットコイン
インターネット上で取引や通貨発行が行われる「分散型仮想通貨」の一つ。「サトシ・ナカモト」と名乗る正体不明の人物によって投稿された論文に基づき2009年に運用が開始された。政府や中央銀行などの中央機関を介さず、ネットワーク上で取引が行われるため、取引の仲介手数料が低く抑えられるとともに、即時に通貨取引を行うことができる。法定通貨のような発行主体の信用リスクが存在しないというメリットはあるものの、発行主体がないということは、その価値を担保する主体が存在しないということでもあり、ビットコインの管理は自己責任に委ねられている。
- ファミリーファンド方式
複数の投資信託の資金をまとめてマザーファンド(親ファンド)と呼ばれる投資信託に投資し、マザーファンドが実際の運用を行う投資信託の運用方式のこと。投資家は、ベビーファンド(子ファンド)と呼ばれる投資信託を購入し、ベビーファンドがマザーファンドに投資をする。内外の株式や債券などの幅広い種類の資産に分散投資をするファンドを複数運用している投資信託会社の場合、ファンドごとに株式や債券などの銘柄選択をするよりも、国内株式のマザーファンドや外国債券のマザーファンドを作って、複数のベビーファンドが、ファンドごとの運用方針に基づいて複数のマザーファンドに投資したほうが、運用効率が高くなると考えられるが、このような場合にファミリーファンド方式が採用される。
- ファンダメンタルズ分析
ファンダメンタルズは、国や企業などの経済状態などを表す指標のことで、経済の基礎的条件と訳される。国や地域の場合、経済成長率、物価上昇率、財政収支などがこれに当たり、企業の場合は、売上高や利益といった業績や資産、負債などの財務状況がこれに当たる。
ファンダメンタルズを元に、株価や為替などの値動きを予測することをファンダメンタルズ分析という。ファンダメンタルズの内容は、短期的には市場価格に反映しないものもあるが、中長期的には反映されると考えられるため、中長期の運用の際には、ファンダメンタルズ分析が重要になる。
- ファンド・オブ・ファンズ
複数の投資信託を投資対象とする投資信託のこと。通常の投資信託は、株や債券などを投資対象とするが、ファンド・オブ・ファンズでは、投資信託に投資することで、投資対象や運用会社が分散されて、投資信託のメリットである分散投資によるリスクの低減効果が、さらに大きく働くことが期待できる。
- フィデューシャリー・デューティー(受託者責任 Fiduciary Duty)
信認を受けた者が履行すべき義務のこと。これは顧客本位の業務運営を指し、金融機関は資産を預けている顧客に対し、利益を最大限にすることを目標に利益に反する行為を行なってはならないとするもの。2014年に金融庁が「平成26事務年度金融モニタリング基本方針」の中でフィデューシャリー・デューティーという言葉を扱ったことで関心が高まった。その中では、「他者の信認を得て、一定の任務を遂行すべき者が負っている幅広い様々な役割・責任の総称」と定義されている。これを受けて2015年以降、各金融機関からは投資家に対する公約としてフィデューシャリー宣言を発表するなどの動きが出ている。
- 物価指数
さまざまなモノやサービスの価格をまとめた総合的な価格水準を、基準年次を100とした指数として表したもの。物価指数には多くの種類があるが、わが国で代表的なものとしては、消費者が購入する財やサービスの価格を示した「消費者物価指数」、企業間で取引される財の価格を示した「企業物価指数」、企業間で取引されるサービスの価格を示した「企業向けサービス価格指数」、日本全体の物価を包括的に示した「GDPデフレーター」などがある。
「消費者物価指数」は総務省が、「企業物価指数」と「企業向けサービス価格指数」は日本銀行が、「GDPデフレーター」は内閣府が作成、発表している。
- ブロックチェーン
P2P(ピア・ツー・ピア)と呼ばれる複数の端末間ネットワーク上に分散保存された取引台帳のこと。P2P上の1箇所のコンピュータが攻撃されてダウンしても、他のコンピュータが同じデータを保存しているため、データは保護される。ビットコインなどの仮想通貨の取引記録などに使用される。
電子データであるビットコインの取引記録は、P2P上に分散保存され、これを時系列順に集計することで現在の保有者が判明する。この取引データはブロックと呼ばれる一定の単位ごとに保管され、ブロック同士を時系列順に鎖上につないでハッシュと呼ばれる改ざん防止の暗号化処理を行う。これにより、ある取引が改ざんされると、そのブロックのハッシュが変わって無効になるだけでなく、ブロックチェーン上の他のブロックのハッシュも連鎖的に変わって無効になるため、全取引データの有効性の検証が容易に行われ、取引データの真正性が保証される。
このようなブロックチェーンが持つ「中央集権的管理が不要」、「強力な改ざん耐性」といった特徴を活かして、仮想通貨以外にも用途が拡大している。例えば、サプライチェーン内の取引記録を保管することで信用状やファクタリング機能を代替するソリューションや、贋作の排除を目的として美術品の取引記録の保管に利用したり、スウェーデンなどでは不動産登記システムに導入する実験なども始まっている。
- ヘッジ取引
現物の価格変動リスクを、先物取引などを利用して回避(ヘッジ)する取引などのことをいう。例えば、現物株を保有している投資家が、今後の株価下落が予想される状況で、現物株を売却せずに先物等を売り建てることで、現物株に発生する評価損を先物等の利益でカバーしようとする「売りヘッジ」や、また、いますぐに現物株を購入する資金はないが、近い将来資金を得ることができるような状況にある場合、買う前に株価が上昇してしまうリスクを回避する方法として、先物等を買い建てておく「買いヘッジ」、取引の決済を外貨で行うので、円貨に転換できる時期までに為替が変動して為替差損を被らないよう、為替予約を利用して利益を確定させる「為替ヘッジ」などがある。
- ベビーファンド
ファミリーファンド方式で運用する投資信託のうち、実際に投資家が購入する投資信託のことで、子ファンドともいう。ファミリーファンド方式では、実際の運用を行うマザーファンドと、投資家から資金を集めるベビーファンドの2種類の投資信託がある。ベビーファンドは、その運用方針に適したマザーファンドに投資をするが、必要に応じて複数のマザーファンドを使う。一方、マザーファンドは複数のベビーファンドから資金を集めて運用する。この方式により、ひとつの投資信託で資金を集めて運用するのに比べ、より大きな資金の運用や運営管理の合理化が可能になる。
- 変動金利
変動金利とは、保有期間中でも市場金利の変化に連動して利率が変化するものをいい、代表的な商品としては中期国債ファンド、公社債投信、MMF等がある。
現在低金利で、近い将来金利が上昇すると予想されるときには、変動金利型の商品で、かつ短期のものが有利になる。
- ポートフォリオ
投資家が保有する金融資産の組み合わせのこと。株式、債券、不動産、商品、銀行預金、現金など、できるだけ多様な資産に分散することで、期待収益率に対するリスクを低くすることができる。このことを理論的に説明した、米国の経済学者ハリー・マーコヴィッツは、「現代ポートフォリオ理論(Modern Portfolio Theory)」によってノーベル経済学賞を受賞した。この理論に従えば、合理的投資家はリスク回避的であり、同じ期待収益率を達成するものの中で最もリスク(=収益率の標準偏差)が小さいものを選択すると考えられ、資産の分散によりリスクの低減効果が得られる、とされている。
もともとの語源は、紙ばさみや書類入れという意味で、欧米では紙ばさみに資産の明細書を保管していたことが由来となっている。
- ポートフォリオ・マネージャー
運用会社に所属しながら、運用方針に従って、市場や銘柄の分析、選定、ポートフォリオの組み入れ比率や売買のタイミングを検討し、投資家から預かった資産を運用する者のこと。投資信託を運用するポートフォリオ・マネージャーのことを、ファンド・マネージャーともいう。
ポートフォリオ・マネージャーは、投資戦略を練り、個々の投資商品を選び、その運用成績を評価し、必要があればそのポートフォリオを最適化することによって報酬を受け取る。通常、運用会社には、ポートフォリオ・マネージャー以外にも、ストラテジストやエコノミスト、リサーチアナリストなどの様々な専門家が所属しており、ポートフォリオ・マネージャーは、各専門家からの高度な情報やアドバイスを受けながら、投資の意思決定やファンドのマネジメントなどの役割を担っている。
- ボトムアップ・アプローチ
国や業種などのマクロ的視点での資産配分を重視せず、ファンドマネージャーやアナリストが行う個別銘柄の調査や分析の結果に従って投資する銘柄を選択し、ポートフォリオを構築する方法のこと。企業の実力に比べて株価が割安な銘柄をピックアップしていくバリュー型や、成長率の高い企業をピックアップしていくグロース型など、一定の基準に基づいて個別企業を1社ずつ選んで構築されるポートフォリオもボトムアップ・アプローチによるものである。